ヘブライ語で平和を意味する言葉「ソロモン」。
日本では、マンガやライトノベル、ゲームといったサブカルチャーでよく耳にする言葉かもしれません。
モデルとなったのは、古代イスラエルで、賢王と称えられたソロモン王。
オカルト的な伝説に事欠かない王でもありました。
歴史で知られるソロモン王
紀元前971~931年に、古代イスラエル王国の3代目の王として君臨していた人物。
旧約聖書に登場していたり、キリスト教の教派の一つ、正教会で聖人と認定されていたりなど、数多くの逸話が見られる王様です。
賢王としても有名で、イスラエル王国に経済的な発展と、国際的な名声をもたらしたとも言われています。
諸外国との貿易のためのインフラ整備など、さまざまな建設事業を実施。
各種制度の整備や、外交手腕などでも、腕を振るいました。
その知恵の深さは、国内のみならず、諸外国の人間までがソロモン王を訪ねてきたほどでした。
しかし、このソロモンの知恵や建設事業の実施には、神や悪魔の存在が関係しているという話も残っています。
神より与えられた「ソロモンの知恵」
ソロモン王の伝説の中で、最も有名なのが「ソロモンの知恵」。
実は、この知恵は、神によって与えられた「結婚祝い」でした。
ソロモン王が、エジプトのファラオ(王)の娘と結婚し、神に盛大な捧げ物をしたときのことです。
捧げ物に喜んだ神は、夢枕に立ち、「なんでも望むものを与えよう」と伝えてきました。
ソロモン王は、神の言葉に対して、こう答えました。
「私は若いため、国を治めるすべを知りません。そのための知恵がほしいと思います。」
知恵を求めたことを喜んだ神は、知恵のほかに、富と名声を与えることも約束します。
これが、後のイスラエル王国の発展へと繋がったのでしょう。
名裁きで世界的な知名度を得る
ソロモン王の知恵を表す逸話として、子どもを取り合う二人の女への裁きが有名です。
ある日、ソロモン王のもとを訪ねてきた二人の女が、次のような訴えをしてきました。
「私たちは同じ家に住むものだ。 先日、私は一人の子を生んだ。 そして、その後に彼女も一人の子を生んだ。 しかし、彼女の子は死んでしまった。 恐ろしいことに、彼女は死んだ子と、私の子を入れ替えた!生きている子は、私の子だ!」
「何を言うか、私こそが生きている子の母だ!」
二人の女は、互いにゆずりません。
これに対して、ソロモン王は「生きている子を、剣で二つに断ち切り、それぞれの女に半分ずつ与えよう」と答えます。
すると、片方の女が「やめてください!その子は、あの女にあげてください!お願いですから、殺さないでください!」と叫びました。
その様子を見たソロモン王は、「この女こそが本物の母である!」と言い、子を返すように命じました。
そして、この愛こそが、本物の母だけが持つものだと説いたのです。
この裁きの逸話は、後に世界に広く伝わっていくことになりました。
名裁きといえば、江戸時代に腕をふるった大岡越前の守が日本では有名ですが、ソロモン王の逸話は、大岡裁きにも取り入れられています。
大岡裁きの「子争い」という話で、子どもを取り合う二人の母親に対して、「それぞれ子どもの手を片方ずつ取り、力いっぱい引っ張りなさい。 勝った方を本物としよう。」と伝えたものがあります。
ここでは、両側から引っ張られ、痛みに泣く子の手を離した方を本当の母としています。
「ソロモンの指輪」で建設事業
エルサレムに神殿を建設しようとしたときのこと、工事がなかなかうまくいかないことに困ったソロモン王は、神に祈りました。
祈りに応えた神は、天使ミカエルをつかわし、ソロモン王に一つの指輪を授けました。
真鍮(しんちゅう)と鉄で造られた指輪には、偉大な力が込められていました。
呪文を唱えて投げると、真鍮の部分は天使を従わせ、鉄の部分は悪魔を従わせることができるというのです。
ソロモン王は、この指輪で従えた天使と悪魔の力を使って、無事に神殿の建設を成功させました。
しかし、誤算が一つ。
強制的に建設事業で働かせられた、悪魔たちの怒りが凄かったのです。
怒りを恐れたソロモン王は、真鍮の壺に72人の悪魔を封印し、「バビロンの穴」と呼ばれる深い湖の底に沈めることにしました。
ところが、この壺は、後に発見されてしまいます。
「中身はお宝か?」と期待した人間の手によって封印が解かれてしまい、悪魔は再び外に出てしまったのです。
幸いなことに、逃げ出した悪魔は、地獄にあるそれぞれの領地に戻ったといわれています。
これらの悪魔が、「ソロモン72柱」と呼ばれるものです。
それぞれの名前は、ゲームやマンガなどのキャラクターとしてもよく扱われるため、意外と聞き覚えがある人もいるかもしれません。
ちなみに、「ソロモン72柱」には序列があり、順番に並べると、以下のようになります。
- バアル
- アガレス
- ウァサゴ
- ガミジン
- マルバス
- ウァレフォル
- アモン
- バルバトス
- パイモン
- ブエル
- グシオン
- シトリー
- ベレト
- レラジェ
- エリゴス
- ゼパル
- ボティス
- バティン
- サレオス
- プルソン
- モラクス
- イポス
- アイム
- ナベリウス
- グラシャ=ラボラス
- ブネ
- ロノウェ
- ベリト
- アスタロト
- フォルネウス
- フォラス
- アスモデウス
- ガープ
- フルフル
- マルコシアス
- ストラス
- フェニックス
- ハルファス
- マルファス
- ラウム
- フォカロル
- ウェパル
- サブナック
- シャックス
- ヴィネ
- ビフロンス
- ウヴァル
- ハーゲンティ
- クロケル
- フルカス
- バラム
- アロケル
- カイム
- ムルムル
- オロバス
- グレモリー
- オセ
- アミー
- オリアス
- ウァプラ
- ザガン
- ウァラク
- アンドラス
- フラウロス
- アンドレアルフス
- キマリス
- アムドゥスキアス
- ベリアル
- デカラビア
- セーレ
- ダンタリオン
- アンドロマリウス
ソロモン王~知恵の王と72柱の悪魔たち~ まとめ
神に知恵を与えられ、悪魔をも従わせた賢王ソロモン。
「ソロモンの知恵」、「ソロモンの指輪」、「ソロモン72柱」のワードは、オカルト好きには鉄板かもしれません。
海外に在住しながらライティングしています。