北欧神話の母(男ですが)と言える存在です。

というのは、体から世界が作り出されてとされているからです。

と言っても、ユミルが生んだわけでも、ユミルがその手でせっせと作ったというわけでもありません。

ではどうやって世界が作られたのか、北欧神話最初の殺人事件が深く関わっていたのです。

 

霜の巨人&原初の巨人&敵?

ユミル(モンスト)種族: 霜の巨人
地域: ニヴルヘイム
別名: 原初の巨人など

世界の始まりにただ一人いた巨人ユミル。

ユミルは北欧神話の始まりの神となる巨人でした。

と同時に、ロキや魔狼フェンリル、大蛇ヨルムンガンドなど、ラグナログでアースガルドの神々と対決する巨人達の先祖でもありました。

何もない混沌とした世界にただ一つ氷の塊がありました。

それが溶けて滴り落ちた雫からユミルが生まれたとされています。

しかし、ユミルは後に最高神であるオーディンとその兄弟の手によって殺されました。

彼らはユミルの死骸から世界を作り出したと言われています。

武器などの持ち物はないのですが、ユミルと深い関わりのある生き物を紹介します。

 

アウズフムラ

ユミルと同じように、凍りついたエーリヴァーガル川の水が溶けて滴った雫から生まれた原初の牝牛です。

アウズフムラから出てくる乳は4つの川に変化し、ユミルはこの乳を飲んで成長しました。

牝牛自身は氷を覆っている塩辛い霜を舐めて生きていたそうです。

アウズフムラ

 

混沌の世界から登場した巨人

未だこの世に神も巨人も、もちろん人間も存在しなかった遙か昔、世界はカオス状態でした。

ただ一つ北に極寒の地ニヴルヘイムがあり、南には灼熱の国ムスペルヘイムがあることだけはわかっていました。

時が過ぎると共に、二つの地域の寒気と熱気とがぶつかり合い、その場所から溶け出した氷の雫から、原初の巨人かつ霜の巨人たちの先祖となったユミルが誕生しました。

また別の説では、エーリヴァーガルという川の毒が固まってユミルが生まれたとも言われています。

ユミルに続いてアウズフムラという牝牛も同じ川の雫から生まれたのです。

食料を探していたユミルは、アウズフムラの乳から流れ出て川となった4本の乳の川を飲みながら成長しました。

しかしこの時期の世界には、まだユミルとアウズフムラの一人と1頭しか存在していませんでした。

では、ユミルはどうやって巨人族の祖になれたのでしょうか。

そもそもユミルという名前は【混合物】とか【両性具有】と解釈されることがあるそうです。

ということは、男であるユミルは自分一人で産んだのかとも思えますね。

ある時、ユミルは沢山の寝汗をかいそうです。

すると、左脇の下から男と女の巨人が生まれ、両足が交わると6つの頭を持つ息子が生まれたと言います。

こんなふうにしてユミルの体のあちらこちらから巨人が出て来たのです。

ユミルから生まれた巨人族は【霜の巨人】と呼ばれるようになりました。

 

ユミル殺害と神々の誕生

ユミルユミルが氷の塊から滴る雫から生まれたのに続いて、最初の神であるブーリがぶ厚い氷の中から誕生しました。

ブーリは氷の中に埋まっていたのですが、原初の牝牛アウズフムラが舐めていた「塩辛い霜」はその氷に付いていたのです。

アウズフムラが霜を舐めることで氷が溶けたため、ブーリは目出度く、外の世界へと出て来られたのでした。

ブーリはその後ユミルの娘との間にボルという息子をもうけました。

そしてボルも巨人族の娘ベストラを娶り、彼女との間にオーディン、ヴェリ、ヴェーの兄弟が誕生したのです。

つまり、オーディンにとってユミルは曾祖父ということになります。

ところが、オーディンの世代で、巨人族との間に初めての争いが起こったのです。

一説には美形のブーリをユミルはもともと気に食わなかっためで、その気持ちが高じて、霜の巨人一族がブーリを殺害したと言われているのです。

簡単に姻戚関係で説明すると、舅が婿を殺したということになります。

話はここからもっと凄惨な展開になっていきます。

曾祖父ユミル達が祖父ブーリを殺したことを怒ったオーディンら3人の兄弟は敵討ちとばかり、ユミルを殺してしまったのです。

本当の動機はブーリの件ではなく、オーディンが自分たちの手で世界を治めたかったので、目の上のたんこぶである原初の神を排除しようとしたとも推理されていますが、ユミルを殺害した本当の動機は、どの原典にも示されていません。

巨体のユミルが倒れると、その体からおびただしい量の血液が流れ出しました。

あふれ出した血の海はやがて大洪水となって、巨人族たちを飲みこんで行きました。

たいていの巨人が犠牲になったのですが、生き残った巨人も数人はいたそうです。

『新エッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」によると、生き残った巨人族は石臼の上に乗って難を逃れたベルゲルミルと、その妻の二人だけだったと言います。

ロキも巨人族なのですが、この時にはまだ生まれていなかったのでしょう。

 

ユミルの死骸から作り出された世界

ギンヌンガガプ
出典:ウィキペディア

ユミルの死骸は、オーディンらによってギンヌンガガプという深い穴に運びこまれました。

ユミルの遺体でこの穴は一杯になったそうです。

さてオーディン達は肉体から大地を作り、骨から岩山、血から海と湖を作り、頭蓋骨を天の覆いにしました。

オーディン達はユミルの体から世界を作り出したのです。

そう考えるとユミルがどれほど巨大だったのかと想像できませんね。

しかし、その巨体が倒れたのは大地なのに、それまでは存在してなかったのでしょうか?

考えると“鶏と卵論争”になりそうですね。

整合性がとれないところも神話だからこそなのでしょう。

さて生き残った巨人族は少しずつ数を増やし、ヨトゥンヘイムという土地で生活を始めます。

そして先祖であるユミルを殺害したアースガルドの神々との対立は徐々に深まっていったのでした。

それがやがてラグナログにつながっていくのです。

 

エンタメ世界のユミル

巨大なユミルはゲームでは強力な敵キャラになるのではないでしょうか?

ユミルという名前のキャラクターが登場すると、ほとんどが氷の属性を持っているのは【霜の巨人】種族ということが由来しているようですね。

 

『進撃の巨人』

ユミル(進撃の巨人)
ユミル(進撃の巨人)

アースガルドの神々は巨人族との遺恨を恐れ、ユミルのまつげで人間の国ミッドガルドを取り囲む壁を作って、その中に人間を住まわせたと言います。

この【人間が脅威から身を守るために壁の中で生活する】という状況はどこかで聞いた覚えはありませんか?

そうです、原作マンガもアニメも大ヒットした漫画『進撃の巨人』ですね。

特撮技術を駆使した実写映画もありましたが。

『進撃の巨人』では【ユミル】という名の巨人化するキャラクターも登場しますし、人間達を守る壁がなぜ建造されたか、その謎に巨人が関わったという設定など、北欧神話の影響が強く窺えます。

原作者の諫山創氏も「北欧神話を知っていたら、このストーリーは読み解けますよ」と明言しているそうです。

ファンの間でも、北欧神話を知っているといないとでは、この漫画の楽しみ方がかなり違ってくると評判です。

 

ユミル~神々の誕生と死骸から作り出された北欧神話の世界~ まとめ

曾孫オーディン達に殺害されるという悲惨な最期を迎えた巨人ユミル。

葬られるどころか、自分の死骸を切り刻まれ(解剖され)、骨や血で世界を作り出される…

なかなか皮肉で残酷な展開ですね。

しかし、忘れてはならないのは北欧神話自体がユミルの死骸の上(アースガルドやミッドガルドなどの9つの世界)で繰り広げられるということです。

終わりが予言されている北欧神話は、そのスタートから血の臭いに満ちた陰惨な物語であると改めて感じますね。

SIYA

最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。

「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)

もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。

現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。

マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。