中世アイスランドで成立した古ノルド語による散文作品を【サガ】と呼びます。

主にノルウェーやアイスランドの出来事を題材にしたものが多く、200ほどが現在にも伝えられていると言われています。

今やファンタジー小説などでは“長編小説”と同一視されているようですね。

急逝した栗本薫の『グイン・サーガ』シリーズなどはご存じの方も多いのではないでしょうか?

 

4つの物語群

今まで紹介してきたように、北欧神話ではラグナロクにより世界は一度滅びてしまいます。

しかし、無となったはずの世界はやがて息を吹き返します。

かろうじて生き延びた神々、人間達が生きてゆく新世界として蘇ったのです。

この時、ラグナログを生き残った男女が現代の人間の祖先とされています。

聖書におけるアダムとイヴのように思われますが、こういった展開は北欧独自の文化と、当時世界的に広まりつつあったキリスト教が融合したために生まれたものと考えられているようです。

このように北欧の歴史や文化、あるいは実在した国王、英雄達の活躍などを記したエピソード、要するに人間に関する逸話を【サガ】と言います。

主に12世紀から14世紀にかけて成立した【サガ】は4種類に分けて考えられています。

【宗教的、学問的サガ】【王のサガ】【アイスランド人のサガ】【伝説的サガ】の4ジャンルで、ゲルマン民族の神話などを記した新旧の【エッダ】とはまた別の角度から北欧の文化や歴史などを知ることができる貴重な資料とされています。

 

北欧神話の根幹=エッダ

古エッダ

詩のエッダとも言います。

著者:不明
成立:800~1100年頃

17世紀に発見された北欧では最も偉大な古詩集です。

デンマーク王に献上された『王の写本(Godex Regius)29編』に、別の写本から『バルドルの夢』などの物語を加えたものとなっています。

バルドルはオーディンの息子で、顔良し、性格良し、血筋良しの貴公子でしたから、彼の夢って一体どんなものなんでしょう。

気になるのは筆者だけでしょうか?

主な内容:【古エッダ】には神話、英雄詩、格言詩の3本柱があり【巫女の予言】【ヴァフスルーズニルの言葉】【スキールニルの旅】【ロキの口論】【スリュムの歌】などです。

それぞれ北欧神話に登場する神達に関する逸話ということがタイトルでわかりますね。

新エッダ

スノッリのエッダとも言います。

著者:スノッリ・ストゥルルソン。
成立:1220年頃

スノッリ・ストゥルルソン

アイスランドの政治家であり、詩人でもあったスノッリが表した詩学入門書です。

彼自身はかなり権力志向の強い人物だったようで、最初の結婚も妻の実家の財産目当てと言われていますし、機会を捉えては自身の領地拡大を図ったようです。

そのためか、晩年は親族達によって暗殺されるという悲劇的な最期を迎えました。

スノッリの著作は【新エッダ】の他に【ヘイムスクリングラ】という歴史書があります。

これは彼が編集したというノルウェー王家のサガの総称です。

【ヘイムスクリングラ】は評価の高い史書です。

元々はただ【エッダ】と呼ばれていました。

スノッリが試作法の起源となった神話やその実用例について3部構成で解説しています。

主な内容

第1部は何回か紹介した《ギュルヴィたぶらかし》です。

これはスウェーデン王国最古の王とされるギュルヴィと最高神オーディンとの質疑応答をまとめたもので、それがそのまま神話として成立しているのです

第2部は《詩語法》です。

またの名は《詩人の言葉》と言い、北欧神話の海神エーギルと詩神ブラギとの詩に関する会話をまとめたものです。

詩作法の実例を示したり、用法について紹介したりしています。

第3部は《韻律一覧》です。なんだか難しそうな気がしますが、要するにスノッリが作った“詩のお手本”です。

120もの詩の全てが別々の韻律と詩形で作られていて、スノッリの詩人としての才能の凄さがわかると言われています。

 

北欧文化を伝える文学=サガ

ではこれから今回の主題である【サガ】について紹介します。

4種類あると前述しましたね。

宗教的・学問的サガ

アイスランドへの移住やキリスト教への改宗の歴史などが示されている記録で、ジャンルとすれば宗教や学問二冠するものと言うことになります。

ノルウェーからアイスランドへの植民の記録である【植民の書】やキリスト教に関係する逸話などです。

王のサガ

ノルウェーやデンマークなどの王族を主人公として、中世(9~13世紀)の北欧の歴史について示したものです。

当時世界の海で大活躍した(?)ヨームヴァイキングについてのサガやスノッリ作と言われるヘイムスクリングラなどが中心となっています。

アイスランド人のサガ

キリスト教伝来以前のアイスランド人の生活などを記しています。

芸術的価値が高いと言われ、サガ文学の中では一番の傑作と呼ばれているそうです。

海神エーギルのサガ、ヴァイキングの血を引く悲劇の青年グレティルのサガ(このサガは人気があるそうです)などが主な内容です。

伝説的サガ

異教時代の英雄たちについて示しています。

ただし歴史的には正確な記述が少ないので【嘘のサガ】というあまりありがたくない別名を持つサガでもあります。

デンマーク王ヘルギの息子フロールヴ・ウラキのサガ、オーディンの血を引くとされるヴォルスンガのサガなどがあります。

オーディンはもちろん、ヘルギも存在が疑われる王ですから、その言動を示したサガに信ぴょう性がないとされても不思議はないですよね。

 

人間の歴史を記した【サガ】~北欧文化の案内人たる独自の文学~ まとめ

北欧神話を彩る外側のアクセントと言うべき、【サガ】【エッダ】【ルーン文字】について紹介しました。

一口に北欧神話と言っても登場人物が多すぎ、世界も多すぎて、混乱してしまいそうです。

でも、何かのとっかかりを見つけて1つずつ読んでいってもらえたらと思います。

SIYA

最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。

「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)

もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。

現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。

マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。