これまで北欧神話について様々なエピソードを紹介してきました。

最高神オーディンを始めとするアースガルドの神々、彼らの敵となる巨人族、2つの種族を行き来する邪神ロキ、神々の戦いに巻き込まれ滅んでしまう人間族…個性的な神々や人々が陰惨な雰囲気に彩りを添えています。

 

厳しい自然から誕生した神話

神々と巨人達、一癖も二癖もある数多くのキャラクターと、彼らが繰り広げる沢山の戦いが最大の魅力と言える北欧神話は、北ヨーロッパの厳しい自然を母親として生まれました。

簡単に言えばスタートはオーディン兄弟による先祖巨人ユミルの殺人事件、神々同士の騙し合いや殺し合い、戦いなどを経て、ラストは【最終戦争=ラグナログ】です。

そこで人間を含めた神々と巨人が滅んでしまうというのが、主なストーリーという、何とも救いようのない暗い神話と感じる方も多いと思います。

と言っても、欲望渦巻く陰惨な話だけではなく、時には人間臭くてユーモアたっぷりな神々のエピソード(雷神トールの女装話、足を見て結婚相手を選んだ女巨人の話など)もあります。

しかし、こんな滑稽なエピソードですら結局は争いを引き起こす伏線となって、世界のあらゆる出来事が滅亡というクライマックスに向かって繰り広げられてゆくという、珍しい物語なのです。

同じ神話でも、世界を作り、人間達を戦わせたり、アバンチュールを楽しんだり、散々好き勝手なことをして、後は人間に世界を任せて神々はオリンポスなどに引っ込んでしまったギリシャ神話とは全然違いますよね。

元をたどれば北欧神話はデンマークやノルウェー、スウェーデンなどスカンジナビア半島に住む北方ゲルマン人の間に約2,000年前から語り継がれてきたと物語と言われています。

今でもそうですが、北極に近い北欧に住む人々は、1年の半分も氷に閉ざされた長い冬に耐えながら、農耕や狩猟で日々の生活を送っていました。

雪と氷の土地はブリザードが吹き荒れることもあり、人間が暮らすには困難が多く、毎日が生きるか死ぬかという過酷な戦いの日々だったのでしょう。

現在もドキュメンタリー番組などでエスキモーの生活を見るとよくわかりますね。

このような厳しい自然環境は当然そこから生まれる文化に強く影響します。

北欧神話に登場する神々がやたらと好戦的な性格になるのも当たり前なのかも知れません。

成立した正確な時期は不明ですが、北欧神話は各地に古くから残る伝承や信仰、宗教などが紀元前1世紀頃から紀元後数百年にかけて1つにまとまって、やがて神話という形になったようです。

それが口伝えで長く伝えられてきたのでしょう。

8世紀から10世紀頃になると北ヨーロッパ各地ではバイキングが活躍するようになりました。

その荒々しくもたくましく生きるバイキングの活動に、それまで伝えられてきた神々の物語や格言詩が加わり、英雄伝説と合体しました。

その物語が12世紀頃に書物として記され、21世紀の今日まで残っているのです。

息の長い物語ですね。

12世紀頃にまとめられた書物というのが、以前紹介した2種類の【エッダ】と呼ばれる神話集です。

1種類は【古エッダ(詩のエッダ)】と呼ばれる文字どおり古い詩集で、17世紀には写本が発見されましたが、作者も成立時期も明確にはわかっていません。

もう1種類は【新エッダ(スノッリのエッダ)】と呼ばれ、アイスランドの政治家でもあった詩人スノッリ・ストゥルルソンが北欧神話を用いて作成した詩人になりたい人のための詩学入門書のようなものです。

これらの書物は神話だけではなく、当時の北ヨーロッパの人々がどんな生活をしていたのかを知るよすがともなっていて、史料としてもこの価値が高く認められています。

定められている滅亡へと進む北欧神話。

虚無感漂う神話はこの2種類の【エッダ】を土台にして成立したのです。

 

北欧神話とは?~滅びゆく世界に生きる神々の物語~ まとめ

太陽降り注ぐ地中海で成立したギリシャ神話、滔々たるナイル川と砂漠で成立したエジプト神話、悠久のガンジス川とインド洋を背景に成立したインド神話…神話の成立には発祥地の自然環境が深く関わっています。

であれば、北欧の地でラグナログへ向かう神話が成立したのは当然なのかもしれません。

しかし、滅んだはずの世界には生き残った人間や神がいて、新たな世界を開きました。

それが神話の持つ希望ではないかと思います。

SIYA

最後まで読んでくださってありがとうございます。
マイベスト漫画は何と言っても山岸凉子の『日出処の天子』連載初回に心臓わしづかみにされました。

「なんでなんで聖徳太子が、1万円札が、こんな妖しい美少年に!?」などと興奮しつつ毎月雑誌を購入して読みふけりました。
(当時の万札は聖徳太子だったのですよ、念のため)

もともと歴史が好きだったので、興味は日本史からシルクロード、三国志、ヨーロッパ、世界史へと展開。 その流れでギリシャ神話にもドはまりして、本やら漫画を集めたり…それが今に役立ってるのかな?と思ってます。

現在、欠かさず読んでいるのが『龍帥の翼』。 司馬遼太郎の『項羽と劉邦』は有名ですが、劉邦の軍師となった張良が主役の漫画です。 頭が切れるのに、病弱で美形という少女漫画のようなキャラですが、史実ですからね。

マニアックな人間ですが、これからもよろしくお願いします。