ケンタウロス(モンスト)馬の体に人間の頭。

ケンタウロスの姿を知っている方も多いのではないでしょうか?

《賢人》と呼ばれる者も、《悪辣》と言われる者もいるケンタウロス族。

筆者は山岸凉子の『妖精王』に登場するケイローンを思い出しましたが、さて本当のケンタウロス族とは一体どのような一族だったのでしょうか?

 

ゼウスの嫉妬によって生まれた?

ケンタウロス(メガテン)ケンタウロス一族が生まれた経緯として一番有名なのは、ゼウスが珍しく嫉妬したためという説です。

テッサリア王の息子のイクシオンという男は、求婚者の父親をだまし討ちにした重罪の犯人ということで、罪を浄める者もつき合おうとする者もいませんでした。

ところが、ゼウスだけは哀れんで罪を浄めてやったそうです。

ゼウスにしては珍しい善行ですが、イクシオンはゼウスに感謝するどころか、逆に増長したあげく「女神ヘラは私を寵愛している」と言いふらすようになったようです。

これには当人のヘラはもちろんゼウスも腹立たしく思ったそうです。

恩を仇で返された形のゼウスはイクシオンを懲らしめようと罠を仕掛けました。

雲でヘラの姿を作り、イクシオンをだましてこの雲と交わるようにしむけたのです。

イクシオンは「ヘラと交わった」と大喜びでしたが、本当のところは神々はちゃんとわかっていました。

一人で舞い上がっているイクシオンをオリンポス神達は笑い者にしていたのでしょう。

イクシオンが交わった雲が身ごもり、ケンタウロス族が誕生したと言われています。

誕生が《神々への侮辱や冒涜》から始まったものですから、ケンタウロス族が神を軽んじたり、侮るのも当然のことと思われているようです。

 

粗暴な怪物か、誇り高き狩猟の種族か?

ティムフィのケンタウロスケンタウロス族は時代が下がっていくに連れ、半身が獣の生き物は《人間の中に潜む獣のような乱暴な性質を表現している》と考えられ《悪魔のようなもの》と神学者達によって考えられるようになりました。

キリスト教の影響があるのではないかと思われます。

別章で紹介した半身が人間、半身が山羊の姿をしていて、女性や美少年に目がないサテュロスとか、パンなどと同じように、情欲の化身と捉えられていったのです。

ヘラクレスの章で紹介しましたが、妻のディアネイラをだまし、ヘラクレス横死の原因となったネッソスもケンタウロス族ですね。

ネッソスなどは明らかに《人を騙す》《情欲の化身》としての悪辣なケンタウロス族の象徴でしょう。

その一方、ケンタウロス族には優秀な人物もいました。

博識で芸術と医術に秀でて、アキレウスやイアソンなどのギリシア神話の英雄の教育係として指名されるほどだったケイロンは超一級のケンタウロス族でしょう。

また、ヘラクレスと親交のあったポロス(12の試練で知り合った飲み友達みたいな関係)も優秀なケンタウロスだったと言います。

ちなみにケイロンもポロスもヘラクレスが原因で死んでいます。

酒飲み、女好き、粗暴というケンタウロス族のような性格のヘラクレスが、ケンタウロス族には珍しく穏やかで賢明な二人を死なせることになってしまったというのは、皮肉なのかと思いますね。

ケイロンとポロスの存在が珍しいからなのか、このエピソードをよりどころにケンタウロス族を誇り高い賢者として描く創作物も多いようです。

また狩りに優れた種族でもあったそうです。

下半身が馬ですから、足は速いでしょうし、槍にも優れていたなら、優秀な狩人だったのは間違いないようですね。

 

星座 ケンタウルス座

射手座はケイロンを称えた星座ですが、ケンタウルス座はポロスを称えた星座と言われています。

また、ケンタウロス座の隣にはオオカミ座があるのですが、ケンタウロスの放った槍に射抜かれたオオカミを表わしている星座なのです。

ケンタウルス座を形づくる星の一つであるαケンタウリ(リギル・ケンタウルス)という星は、地球に一番近い恒星として知られています。

 

まとめ

粗暴で自分の欲望に正直、神をも騙そうとするケンタウロス族。

酒に弱い癖に悪酔いして身を破滅させるという低級モンスターと思われるケンタウロス族。

しかし、賢人として神や人間に尊敬されたケンタウロス族もいました。

善と悪を合わせ持つケンタウロス族。

この二面性は現代に生きる人間の性分にも共通するものがあるのではないでしょうか?

誰しも善だけ、悪だけというふうに割り切れるものではないと思います。